ヴェルディ《レクイエム》



2021/10/12 おっそろしい~曲!

恐ろしいのは、はたして曲なのか、それとも演奏なのか? 後で明らかにするが、そんなたぐい稀なる恐ろしさの、ヴェルディの《レクイエム》。ズービン・メータ指揮/ニューヨーク・フィルのCDで久々に聴いたのだが、やはり・・・
ハイ上がりな音質はしかたないにしても、あまりに音が良すぎるからか、ハイドンの有名な《驚愕》なんてもんじゃない、これまた有名な「怒りの日」での、突然の大音響とやら!?もー、どうにもこうにも我慢ならないのだが、いい気持ちで聴いていると、突然、ガガーン!ときて、

すこぶるびっくり仰天‼

いつもながら、ついに、おじけづく。Amazon購入当初、レビューでは僕自身、入手できた喜びで思わず高く評価してしまったけれど、今さら何だが、万人におススメできるようなそんな生易しいCDとはとても言えないし、まったく世話の焼ける、恐ろしい怒濤の嵐のような、すこぶる厳しい楽曲ぞ。あるサイトの方も、アバド/ミラノ・スカラ座管のCDにて語っておられたが、まさに爆弾が落ちたような、おっそろしい~曲には違いない。
ってわけで、音質が悪けりゃいいってもんじゃないのだろうけど、とにかくおっそろしい~この曲を、ちょうど、いかにも音質の悪そうなトスカニーニ指揮/NBC響の、これまた珍しくステレオCDと、これまた運よく演奏ももれなく公開されていたので、ネットで試しに聴いてみた。・・・
そしたらなんと、そんなにおっそろしい~曲でもなく、すんなり耳に入ってきたので、これならいける!と判断。やー、これ欲しいなぁ・・・ 
そんなこんなでトスカニーニのCDをさらに検索していくと、Amazonサイトで、ある方が、何やら「鼓膜が破れる」とか、「スピーカーが壊れる」とか、クソミソに叩いてきたので、ありゃりゃ、これはヤバイかな!?と。考えをくつがえした。
それほど酷いのか?と思ってガックリくるも、それならば、と。また、試しにメータのCDを、柔らかい音を期待しながら、今度はPCに組み込んで聴いてみたのだが・・・案の定、全然おそろしい曲なんかじゃなかった! PCでは、オーディオ装置での大音響の驚異もどこへやら!?といった感じで、きわめて優しい曲に様変わりしてしまったのである。《カルミナ・ブラーナ》でのムーティ盤のときもそうだったが、曲そのものが恐ろしいのではなく、大きな音と小さな音との差があり過ぎて、よけい恐ろしいと感じていたのかもしれない。要するにオーディオ装置の、ダイナミックレンジの広さに原因があったのではないかと、気づいた。いずれ、メータのCDもやはり突然の大音響でかなり損をしていたらしい。合唱陣もオケも演奏は抜群に上手いのだが、音質さえ穏やかであれば、と。自分にとってもただただ悔やまれる、実に惜しいCDであると言えそうだ。なので、慣れてしまえばどうってことなくなると思うし、我慢してでも、もうしばらくはメータのCDに食らいつき、ひたすら聴き込んでいこうかな。との考えで、どうやら決着がついた。


2021/10/29 おっそろしい~曲 その2

自分のCDライブラリーをざっと見渡して感じるのは、チャイコフスキーの《悲愴》から始まって、マーラーにしろ、ストラビンスキーにしろ、まったくただ事ではなく、あたかも口から心臓が飛び出てきそうな!?は、あまりに大げさかもしれないが、ドキッ!とする楽曲が決して少なくないこと。別に、ドキッとする曲を狙って買ったわけではない。たまたまドキッとする曲に打ち当たっただけなのであって、中でも、マーラーの交響曲第6番《悲劇的》終結部の、ガガーン‼とくる最後の一撃はおろか、交響曲第10番「補筆完成版」に至っては、第4楽章の、大砲のタマみたいにいきなり、ガン‼ とくるティンパニーの強打なんてのは、泣く子も黙るどころか、さらにギャーギャー泣きわめかれるに違いない。ザンデルリンク指揮/ベルリン響によるこの第10番は、自分の装置で聴く限り、心臓がいくつあっても足りないくらいに、それはそれは、とにかく耳ふさぎたくなるようなメチャクチャ恐ろしい曲なのである。というか、CDなのである。

ところで、近ごろ妙に気になって、これまた怖くてたまらないが、しかし、すこぶる楽しくもあるヴェルディの《レクイエム》は、あるTV番組のBGMとかでもわりと馴染みのある楽曲。なんたって、ドッカーン‼とくる「怒りの日」がクセモノというか、超有名で、手もとのメータのCDでも、やたらドキッとするし、合唱陣やオーケストラだけでなく、音が良すぎるせいか各独唱陣もけっこう厳しいものがある。この指揮者ならではの退屈しない演奏どころか、いつ爆弾が落ちてくるのやら?始終ビクビクしてなきゃならないという、途轍もない恐ろしさ! ひょっとしたら、かつてのムーティの《春の祭典》と同じように、メータの《レクイエム》だけが異常なのでは!?と考えたり・・・なので、これは所詮ムリな要求かもしれないが、なるべくドキッとしない穏やかな演奏で聴きたくて、トスカニーニか、アバドか、カラヤンか!?・・と、いろいろネットで試聴するのだが、いやはや、どれもみなドキッとしそうな厳しいものばかりで、ダイナミックレンジも、はたして広いのか狭いのか、ネット試聴しただけではちょっとわからない。演奏にかけてはやっぱメータが一番かな??ってことで、どうしてもまた元に戻ってきてしまうし、目移りしてしまって、これといってなかなか決め手となる演奏が見つからない。
次はどれにするのか、いくら考えても、考えても、しかたないことなのだが、とにかくひとつ買うのにも吟味に吟味を重ね、考えに、考えに、考え抜いて、ついに購入したのが、ユージン・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管のCD。実は、Amazonでのレビューも、書いている方がほとんどおらず、いかにも人気なさそうだったのでずっと避けていたのだけれど、しばらくして、別のサイトで試聴コーナーが設けてあったので、これ幸い!といった面持ち。特に、後半でのソプラノ歌手の美声がなんとも言えず魅力的だったし、何より格安で、試聴感も至って標準的でわるくなかったからなのだが、はたして!?
 ・・・
僕が探し求めていたのは、まさしくこれだ!
メータの恐ろしいのとはエライ違いで、かなりいい感じで曲が始まった。何はともあれ、自分の装置で聴いて確かめてみないことにはどうにも埒が明かなかったといえる。何よりもまず、ダイナミックレンジの狭さによる聴きやすさに注目したい。さすがに1964年ステレオ初期の録音だけあって聴きやすいのも当然かもしれない。オーマンディといえば、僕自身、ホルストの《惑星》や、きわめてオーソドックスなワーグナー名曲集CDでもすでに馴染みの、十分信頼できる言わずと知れた世界的名指揮者なのだが、この演奏ではじめてヴェルディ《レクイエム》の魅力を知った気がする。例の「怒りの日」では、ドキッとするどころか、嬉しさのあまり思わず暴れ狂ってしまったが、メータ盤ではなかなか聴けなかった小さな音ももれなく聴こえてくるし、これなら十分ノレル。とにかく素晴らしい!
ちなみに、シッパーズ指揮によるロッシーニの《スターバト・マーテル》も、オマケ?みたいにくっついているのだが、試聴したとき、どうせ大したことないさと、タカをくくっていたものの、まてよ、どこかで聴いたことあるような!?・・・よくよく考えてみたら、オマケどころでなく、なんと、手もとのアンドレア・ボチェッリ《セイクリッド・アリアズ~アヴェマリア》のDVDですでに聴いていたことに気がついた。両テノール歌唱の素晴らしさもさることながら、2曲目とフィナーレの、DVDでのチョン・ミョンフンのあの華麗なる指揮ぶりがありありと目に浮かんでくるのであった。





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